イチゴは秋に苗を植え、冬を越して翌春に収穫する、栽培期間の長い野菜です。だからこそ、最初の「苗選び」でつまずくと、半年以上かけて育てたのに実つきがいまひとつ……ということになりかねません。
ところで、甘くてケーキにも使われるイチゴは果物だと思われがちですが、じつは「野菜」です(果物は木になるもので、同じくサラダに使うアボカドは木に実るため果物に分類されます)。このページでは、20年以上家庭菜園を続けてきた経験をもとに、よい苗の見分け方・クラウンとランナーの意味・一季なりと四季なりの違いまで、後悔しない苗選びを説明します。
苗選びで見るのは「クラウンの太さ」と「葉の状態」
イチゴの苗選びでいちばん大事なのは、クラウン(株の中心の付け根)ががっちり太く、葉が元気かです。
クラウンは葉や花が出てくる成長の中心です。ここが細い苗は、植えてからの伸びも実つきも弱くなりがちです。逆にがっちり太い苗を選べば、冬越しの体力もあり、春にしっかり実をつけてくれます。まずはこの「クラウン重視」を頭に入れて、具体的なチェックポイントを見ていきましょう。
イチゴの基本データ
まず栽培の前提を押さえます。
- 科目:バラ科(連作障害は3〜4年あける)
- 土壌酸度:pH6.0〜6.5
- 育成温度:17〜20℃
- 植え付け適期:10月中旬〜11月上旬
イチゴは野菜では珍しいバラ科です。連作障害はありますが、家庭菜園で続けてバラ科を育てることはほとんどないので、あまり気にしなくて大丈夫です。冬越しをして翌春に収穫を迎える長期栽培なので、よい苗を見極めて寒い冬を乗り越えさせることが、春の収穫につながります。
よい苗の見分け方:4つのチェックポイント
ホームセンターや園芸店で苗を選ぶときは、次の4点を確認します。
- 本葉が3〜4枚あり、葉色が濃い
- クラウンががっちりとして太い
- ランナーの切れ端がついている
- 葉の裏まで見て、虫がいない・枯れていない
聞きなれない言葉が2つあります。「クラウン」と「ランナー」です。
クラウンは、葉が出ている付け根を見ると、ギザギザと王冠のようになっている部分のこと。ほかの野菜でいう成長点にあたります。ここを土に埋めてしまうと、葉や花が出にくくなるので、植え付けのときの大事な目印になります。
ランナーは、イチゴが繁殖するために親株から伸ばすつるのことです。ランナーがついていた逆側に花や実をつける性質があるため、これも植え付け時の向きの目印になります。苗にランナーの切れ端が残っていると、どちら向きに実がつくか分かって便利です。
一季なりと四季なり:いつ収穫したいかで選ぶ
イチゴには大きく2タイプあります。
- 一季なり:春から初夏に収穫。粒が大きく甘みが強い
- 四季なり:春だけでなく初夏や秋にも収穫。暑さや病気に強く、次々に実をつける
すぐに収穫を楽しみたいなら、花芽がついた四季なりの苗を選ぶと、植えた秋から収穫できるものもあります。じっくり大きく甘い実を狙うなら一季なり、という選び方です。
育てやすい品種の例
一季なりでは、宝交早生(小ぶりだが病気に強い)、女峰(病気に強くやや甘酸っぱい)、あかねっ娘(大粒)、とよのか(甘みと香りが強い)などがあります。四季なりでは、夏姫(真夏を除き秋まで収穫)、純ベリー2(小ぶりだが多収)などが育てやすい品種です。
私が育てているのは章姫(あきひめ)ととちおとめです。どちらもスーパーでよく見かける甘い品種で、家庭菜園でも育てやすいです。甘い品種は虫や鳥に狙われやすいので、対策はしっかり必要ですが、自分で育てた甘いイチゴは格別です。なお、イチゴはランナーがたくさん出てくるので、気に入った品種があれば株を増やすのは簡単です。一度よい苗を手に入れれば、翌年以降は自分で苗を作っていけます。
おすすめ用品:イチゴ専用肥料
よい苗を選んだら、植え付け後の肥料も準備しておくと安心です。イチゴ専用肥料なら、実を甘く太らせるための成分バランスがまとまっているので、冬越し後の追肥に使いやすいです。
よくある質問
苗を選ぶとき、いちばん重視するのはどこですか?
クラウン(株の中心の付け根)の太さです。ここが葉や花を出す成長の中心なので、がっちり太い苗を選ぶと、冬越しの体力があり春の実つきもよくなります。あわせて本葉が3〜4枚で葉色が濃いこと、葉の裏に虫や枯れがないことも確認してください。
植えた秋からすぐ収穫したいときはどうすればいいですか?
花芽がついた四季なりの苗を選ぶとよいです。四季なりは春以外にも収穫でき、花芽つきの苗なら植えた秋から実をつけるものもあります。じっくり大きく甘い実を狙うなら、春収穫の一季なりを選びましょう。いつ収穫したいかで選ぶのがおすすめです。
苗は毎年買わないといけませんか?
いいえ。イチゴはランナー(親株から伸びるつる)がたくさん出るので、気に入った品種があれば、そこから子株をとって翌年用の苗を簡単に増やせます。私も章姫やとちおとめをランナーで増やしています。最初によい苗を手に入れれば、あとは自分で苗を作って続けられます。
苗を手に入れたら:購入後の一時管理と葉裏チェック
苗を購入したらすぐに植えられない場合は、日当たりのよい屋外に置き、乾かさないよう水を切らさないようにします。水のやりすぎにも注意が必要で、鉢底から流れる程度をこまめに与えるのが基本です。
植え付け前に必ずやっておきたいのが葉の裏のチェックです。アブラムシやハダニが苗についたまま植えてしまうと、畑全体に広がってしまいます。葉を一枚ずつめくって裏側を確認し、虫がついていたら柔らかいブラシや水で落としてから植えましょう。購入した苗は健康そうに見えても、すでに害虫の卵がついていることがあります。この一手間が、秋の収穫を守ります。
まとめ
イチゴの苗選びは、クラウンの太さと葉の元気さを見ることが第一です。本葉3〜4枚・葉色が濃い・クラウンが太い・葉裏に虫がいない、この4点を確認すれば、半年かけて育てる価値のある苗を選べます。
すぐ収穫したいなら花芽つきの四季なり、大きく甘い実なら一季なり。そして一度よい苗を手に入れれば、ランナーで翌年以降も増やせます。最初の苗選びをていねいにやって、甘いイチゴの収穫まで見守っていきましょう。




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